オーケストラ・リベラ・クラシカ第30回公演に寄せて

タンゲンテンフリューゲルでカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの協奏曲を日本初演
独奏者・上尾直毅が語る

「オーケストラ・リベラ・クラシカ第30回定期演奏会」は上野学園 石橋メモリアルホールでいよいよ今週末10月20日15時開演です。
 今回の公演は、19世紀初頭のヴィーンで製作された世界でも数少ないオリジナルのタンゲンテンフリューゲル(フランツ・ミュンツェンベルガー作:学校法人上野学園所蔵)を用いてカール・フィリップ・エマヌエル・バッハのクラヴィーア(鍵盤)協奏曲ホ短調Wq.15が日本初演されるのが大きな特色です。他の曲の通奏低音もまたこの楽器で演奏します。
 この公演に寄せて今回の独奏者、上尾直毅は次のように語っています。

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OLC事務局. C. P .E. バッハのクラヴィーア協奏曲の作曲年は?
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上尾.
 1745年(31歳)。ベルリンの宮廷楽団員の時代。
(1740年のフリードリヒ2世の国王即位と同時にベルリンの宮廷楽団員となる)

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OLC事務局. 現代譜の出版年と出版社は?

上尾.
 下記の出版楽譜(2011年)が出るまでは、バッハ本人の自筆総譜と本人に近い人間による筆写譜のみで伝わっていました。
 現代譜はC. P .E. バッハ全集9-V。出版社はThe Packard Humanities Instituteです。

Carl Philipp Emanuel Bach The Complete Works 9 -V
2011 by The Packard Humanities Institute
http://www.cpebach.org/

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OLC事務局. この作品の特色としてはどのようなことが挙げられるでしょうか。
  
上尾.
 この作品はC.P.E.バッハの50曲以上ある鍵盤協奏曲の中でも鍵盤ソロのパートがとても技巧的に書かれている作品の1つです。特に早い楽章(1、3楽章)においては細かいパッセージが散りばめられており華やかに響きます。それに対し、第2楽章アダージョではC.P.E.バッハ特有の「語りながら歌う」ような甘美な旋律が魅力的です。

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OLC事務局.この作品をタンゲンテンフリューゲルで演奏する意義はどのようなところにあるでしょうか。
聴きどころはどんなところでしょうか。

上尾.
 18世紀の中頃には、C. P. E. バッハの特にお気に入りの鍵盤楽器であったクラヴィコードのように強弱の差を付けることが出来、尚且つクラヴィコードのような小さな音量ではなくチェンバロほどの音量を持つ鍵盤楽器が、登場し始めていました。タンゲンテンフリューゲルもそのひとつで、18世紀に発明されたばかりの鍵盤楽器でした。
 強弱のニュアンスにより緩除楽章での「語りながら歌う」ような部分では特に効果を発揮するでしょうし、小さな音がどれほどの重要性を持って心に響くのかを体感して頂けると思います。
 速い楽章では、チェンバロには無い装置である、現代ピアノの右ペダルのようなダンパーのオンとオフ機能を使って、華やかさに色を添えることが出来るところも面白いと思います。

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OLC事務局.今公演に向けての上尾さんの抱負を一言いただけますでしょうか

上尾.
 特に今回演奏するC. P .E. バッハの鍵盤協奏曲では、鍵盤ソロ対オーケストラという単純な構図では無く、オーケストラの各パートと鍵盤ソロのそれぞれ全員が、互いに相づちをうったり質問を投げかけるような音楽上の対話がいくつも見られます。このような作品の演奏をアンサンブルに長けた奏者が多いOLCと演奏させて頂くことはとても楽しみで興奮します。と同時に、この演奏会はオールC. P .E. バッハプログラムという、他では見られない特別な公演なので、これを機会にC. P .E. バッハのファンが多く増えたら良いなと思っています。
 再来年2014年は生誕300年ですし!

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 今回のような企画は世界的にみても稀有なものと言えます。そのため、本年度の文化庁芸術祭への参加も決まりました。演奏史上歴史的ともいえるこの公演に多くのお客様がご来場下さいますようお待ちしております。

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