ラ・フォンテヴェルデメンバー 染谷熱子インタヴュー 9月のラ・フォンテヴェルデ公演に向けて抱負語る

宗次ホール広報DMに9月22日同ホールで公演を行なうラ・フォンテヴェルデのメンバー、染谷熱子(そめやねつこ)のインタヴューが掲載されました。その全文を採録します。

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「朗らかな空気の中で、最高にうまい歌手達と
アンサンブルができるのは、本当に幸せです!」
人の声って素晴らしい! ハーモニーって美しい!!
最上級のマドリガーレアンサンブル ラ・フォンテヴェルデ第6回公演 9月22日(木・祝)に開催 

イタリアのバロック音楽が花開くそのさきがけを成したクラウディオ・モンテヴェルディ(1567-1643)は、マドリガーレといわれる形式の歌曲をたくさん残しました。物悲しい恋愛詩に曲をつけたもので、編成こそ小規模ですが、一つずつの詩に込められた音による表現の幅広さはオペラを彷彿とさせるものがあります。劇的で表情豊かなこのマドリガーレをレパートリーの中心に据え「言葉と音楽の融合」を目指す本格派声楽アンサンブル、ラ・フォンテヴェルデの第6回宗次ホール公演を前に、最年少メンバーの染谷熱子さんにたっぷりとお話を伺いました。

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 染谷 熱子 そめや ねつこ (ソプラノ)

洗足学園音楽大学音楽学部声楽卒業、同大学院を首席で修了。東京藝術大学別科古楽を経て、同大学院器楽科古楽バロック声楽を2014年に修了。声楽を佐藤征一郎、白川佳子、大森園子、野々下由香里、ゲルト・テュルク、上杉清仁各氏に学ぶ。これまでにオペラではモーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』のフィオルディリージ、『魔笛』の童子、ビゼー『カルメン』のミカエラ、オペレッタではヨハン・シュトラウス『こうもり』のロザリンデ等を歌い、宗教曲ではヘンデルの『メサイア』等でソプラノ・ソロとして出演する。最近では《レ・ボレアード》や、《コントラポント》、《コーロ・リベロ・クラシコ》、《ラ・フォンテヴェルデ》等にて、古楽を中心とした演奏活動を行っている。アイゼナハ音楽院講師。

○学生時代の話から聞かせて下さい。東京藝術大学の別科と大学院で古楽を専攻なさいましたが、古楽科ってどんなところなんですか?
●私のいた古楽科は東京藝大の中の器楽科の中にあります。『器楽』科の中にバロック『声楽』専攻があるというのは何とも不思議ですが、そこで古楽に関するノウハウを学びます。他の科と違うところは、何といっても科内にたくさんの楽器の学生が存在するというところです。例えば声楽科だと周りは声楽の学生、ピアノ科だとピアノの学生という風に同じ専攻生としか触れ合いませんが、古楽科はバロック・ヴァイオリン、バロック・チェロ、リコーダー、チェンバロ、オルガン、フォルテピアノ等の学生が在籍するので、他の楽器から様々な刺激も受けます。なにより一番良いのは、時に学期末や学園祭などで古楽器オーケストラによる演奏会が出来てしまうことです。私の時もパーセルの「ディドとエネアス」をやったりしました。特に私はバロック・ダンス部に所属していたので(部長もやってました!)、学園祭は一大イベントでした。オーケストラとダンスをフル活用して、モンテヴェルディのオペラのプロローグをやったり、ルイ14世の時代の舞踏会みたいなコンセプトで企画をしたこともあります。

○2014年に大学院を修了し、その年の12月のクリスマスコンサートでラ・フォンテヴェルデ(以下LFV)に初参加されたそうですが、その時の感想は?
●LFVは普通にファンとしてコンサートに行ったこともありましたし、有名なグループですので、とにかく大役が務まるかなと思い緊張しました。しかもその時のプログラムはずっと歌いっぱなしの曲目だったので、スタミナ的にもついていけるか心配がありました。年齢も下なので、上手く立ち回れるか不安でしたが、そういう私の不安も察して優しく接していただきました。最初のリハーサルの時、「音程バッチリだね!」と言われ、飛び上がるほど嬉しかったのを覚えています。しかしそのあと録音などで、自分の経験や知識の少なさゆえ、古楽特有の音の取り方に苦労することになるのですが…(笑)。

○翌年2月にメンバーとして迎え入れられた時は?
●皆さんとても優しいなと思いました。最年少の私が気を遣わないようにと、とても自然に接していただきました。2015年に軽井沢にメンバーで合宿に行ったのですが、その時は毎日歌い、休憩時はご飯を食べに行ったり、バーベキューをしたり、たまには夜中まで語り合ったりして、とても楽しかったです。日頃、よく思いますが、アンサンブルは仲の良さが音に出ます。どんなに上手なメンバーを揃えても雰囲気が悪いと、そのピリピリした空気が必ず音に出ます。LFVのリハーサルでは冗談を言い合ったり、バカをやったりして笑いながら練習しています。そういう朗らかな空気の中で、しかも最高にうまい歌手達とアンサンブルができるのは本当に幸せです。美登里さんには夫婦円満の秘訣とかを聞いたりしてますよ(笑)。

○仲の良さと言えば、染谷さんのブログにはお酒の話がたまに登場しますね。仲間と楽しいお酒を飲むことが良いリフレッシュになっているんでしょうか?
●音楽仲間とお酒を飲むのは本当に楽しいですね。その時演奏している音楽の話や、もちろんプライベートのぶっちゃけトーク、その方の音楽経験や自分の進路相談など、お酒を飲むと話しやすくなります。声楽のテクニックの話などもちょっと聴いたりすると、思いがけずかなり深いところまで教えてもらえたりもするので、お酒の席では楽しく勉強させてもらってます。特にLFVでは上杉さんと谷口さんが良くお酒を飲まれますので、ご一緒させていただいてます! おかげさまで最初の頃に比べて、お酒も随分強くなりました(笑)。

○LFVで歌いはじめて2年近くが経った今、どのように感じていらっしゃいますか?
●メンバーの皆さんは私が古楽をやる前からバッハ・コレギウム・ジャパンのDVDなどで観ていた憧れの人達で、学生時代にも彼らの録音を沢山参考にさせていただきました。そういう歌手達と一緒に歌えるのは本当に幸せです。リハーサル時に「ここはこう歌ったら?」など有益なアドヴァイスをどんどんしてくださいますし(そう言うことを言えない空気のあるグループも沢山あります)、何よりすぐ近くで素晴らしい歌唱が聴けるので、自分が決めつけているテクニックの限界みたいなものを打ち破れます。例えば自分で練習していて「ここのフレーズ歌いにくいなぁ」と思っていても、隣で完璧に歌われると自分が歌えないという言い訳ができませんから、その場で必死にテクニックを盗むよう努力すると、意外とあっさりできたりします(笑)。言葉で何回アドヴァイスされるよりも、実際間近で歌ってもらったほうがよっぽど良い手本になる場合もあるなぁとつくづく感じる瞬間です。

○学生から音楽家へと着実に地歩を固めていらっしゃいますが、振り返ってみてどのようにお感じになりますか?
●大学院時代はとても忙しく、ひどい時は毎日リハーサル、そして月に数回本番という多忙な時もありました。その忙しい日々から一転、卒業したら、4月は本番が1本。5月はリハーサルはおろか本番すらない、そんな状態でした。これから音楽家としてどのように生きていこうか? お仕事が入ってくるのか?など、不安で仕方なかったのを覚えています。しかしその後しばらくしてLFVのお仕事が舞い込んできました。その起用のきっかけはその数年前にとあるアンサンブル・グループで美登里さんのレッスンを受けた際「この子はアンサンブルができるかも」と名前を覚えていただいたことだそうです。その後も、小さな本番を偶然聴きに来てくださっていたとある指揮者の方から大きなお仕事をいただく、ということが数回ありました。目の前にある本番を一生懸命頑張っていれば、誰かが見ていてくれるのだなということを痛切に感じています。今はおかげさまで色々な団体でソロやアンサンブルのメンバーとして起用していただく機会が増え、指導の仕事も増えてきています。

○音楽家として大切にしている言葉があれば、教えていただけますか?
●心に残っている言葉は私の一番最初の声楽の先生の言葉です。「練習の時は自分が一番下手だと思い、本番の時は自分が一番上手だと思いなさい」とよく言われました。今仕事をしていてこんなにも本質をついている言葉はないなと思っています。様々な現場に行くとやはり謙虚でいるということは時にとても難しい局面もありますし、逆に素晴らしい共演者と一緒だと自分のパフォーマンスに自信をなくしてしまいそうになる時も多々ありますから・・・。常にその言葉を胸に、勉強をしています。

○ずばり、古楽の面白さはどんなところでしょうか?
●古楽が面白いのは、その国、時代によってスタイルや楽器がかなり違うところです。フランス、イタリア、イギリス等で各国の特色が全然違いますし、同じ国でもバロックの初期と後期ですと全く違う曲想になったりします。それらを色々演奏出来たり聴いたり出来るのはこの上ない喜びです。

○古楽のひとつの特徴が多声音楽ですが、これは慣れていないと非常に骨が折れるんだとか。どんなところが難しく、そしてどんなところが魅力なんでしょうか?
●各パートの動きや、歌いまわし、 自分が今和音構成音の中の第何音を歌っているのか、誰が自分と同じ音を歌っているのか・不協和音を歌っているのかなど、色々なことにアンテナを張らないといけません。慣れてくるとそれが自然とできるようになってきますが、私はそこまで要領が良いほうでもないので、最初の頃は楽譜に沢山書き込みもしました。LFVで歌っていても、最初の頃は自分と同じ音を歌っている人を意識的に探していましたが、ある時から瞬間的に自分と同じ音を歌っている人の声が聴けるようになった時はとても嬉しかったです。あとは単純に曲の中でお休みが少ないので、体力面でも疲れますし、集中力を持続するのも大変です。リハーサルの休憩時にはコーヒーがマストです(笑)。

○歌手は体が楽器であるうえに、古楽は体力面でもハードなんですね。普段はどんな体のケアをなさっていますか?
●もう時効だと思いますのでお話ししますが、実は昨年末に高熱を出して声が全く出なくなってしまったことがありました。それまでは健康が取り柄だと思っていましたので、まさに青天の霹靂でした。それ以降とにかく風邪を引かないよう気を遣ってます。ちょっと変だと思ったらうがい薬でうがい、漢方入りのど飴、喉スプレー、吸入など色々駆使して、こじらせないようにしています。あとは家で筋トレをしたり、疲労が溜まってきたら頼りにしているマッサージ師さんのところに行くようにしています。とにかく“ひどくなる前に”、を心がけてます。あとは声のメンテナンスのため、定期的にヴォイストレーニングの先生のところに行っています。声という楽器は厄介で、自分の発した音を他人が聴くのと同じように自分では聴けませんから、少しの癖を放っておくととんでもない方向に行ってしまう危険をはらんでいます。ですから良い状態かどうかを客観的に判断していただくために、定期的に行ってメンテナンスを受けています。

○初めてお名前を伺ったとき、「熱子」って素敵なお名前!と思ったのですが、どのような意味が込められているんですか?
●ありがとうございます(笑)よく「芸名ですか?」とか聞かれますが、本名です。父親が命名したそうですが、由来は聞いても教えてくれません(笑)。ちなみに一発で名前を“ねつこ”と読んでもらえたことは人生で2回だけです。子供の頃は変な名前であまり好きではなかったのですが、今は初対面の方でも一度で覚えてもらえるのでとても気に入っています。

○最後に、第6回宗次ホール公演に向けて、名古屋のお客様へメッセージをお願いします。
●今回演奏する第6巻に含まれる『アリアンナの嘆き』は、当時大人気だったモンテヴェルディのオペラのアリアンナの独唱を6声のマドリガーレにしたヴァージョンです。彼女の心の動きが時に繊細に、時にダイナミックに歌われる名作ですので、是非お楽しみください!
マドリガーレを字幕付きで聴ける公演は国内でもとても数少ないと思います。言葉と音楽の融合を、素晴らしい響きの宗次ホールでお楽しみいただければ幸いです。

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